第70章 我が師
シカク「いや……!!」
キリ「!!」
突如、さらなる加速を見せた敵。
それを感知したキリもハッと顔を上げる。
シカク「まずい囲まれる!! キリ、スピード上げるぞ」
キリ「はいっ!」
敵勢を察した使いの鳥もまた、シカクに返信の書簡を急かすように、羽を広げる。
シカク「いや、こっちからの返事はもういい。敵に囲まれているこの中で、よく無事に届けてくれたな」
「もう充分だ。戻ってくれ」と告げれば、羽ばたいた使いは二、三度シカクの上を迷うように飛行してから、ボンッと小さく煙を残して姿を消した。
全速力で、森や荒野を駆けるが、敵との距離はみるみるうちに接近する。
シカク(チィッ、振り切れねぇか)
もともと、相当な速度で走っていたキリに、それ以上の速度を求めること自体が難しいのだ。
よくついてきているが、ついに四方から敵に囲まれる形となってしまった。
シカク(囲まれた……)
シカク「キリ、進路を南に変更。突っ切るぞ」
最も敵の包囲が、手薄な南の方角。
ついに、敵との正面衝突になってしまうが、目の前にいる敵だけを対処し、この包囲を抜ける。
キリ「はい」
息は上がっているものの、キリの士気は高いままだ。闘志溢れる瞳に、シカクは安堵する。
シカク「一時、戦闘にはなるがまともにやり合わなくていい」
ひとまず、この包囲を切り抜けられればそれでいいのだと、キリに告げればキリもそれに頷いた。
シカク「先陣は俺がきる。キリはサポートに回れ」
キリ「はい!」