第70章 我が師
…………………………
キリ「っ、はぁっはっ……」
シカク「キリ、大丈夫か」
キリ「はい……っ」
集落を出てから、丸2日に渡り森の中を走り続けているキリとシカクは互いに目を合わせる。
二人とも汗だくではあるが、キリの目にまだまだ力が見えることに、シカクはひとまず安堵した。
シカク(ほんの数分でも、キリの呼吸を整えさせてやりたいが……)
シカク「チッ」
シカク(ったく、鬱陶しい連中だな)
そう思った途端に、追っ手のスピードが上がり、それに伴ってシカク達も駆ける速度を上げる。
木ノ葉隠れの里方面から、追ってくる敵。接触を避けるために、随分とシカク達も木ノ葉から離れてしまった。
さらに、敵の包囲網はどんどん広がっていき、シカクたちが逃げる道が狭まってきた。
すでに左右と後ろを囲まれて、シカク達は前へ、木ノ葉とは真逆の方向へと逃げ続けるしかない。
八方塞がりな現状に、顔をしかめていれば、シカクはある合図に気が付いた。
シカク「!!」
シカク(ようやくか!)
シカク「キリ! そこの大木を過ぎたところで、右に旋回する」
キリ「はい!」
速度を保ったまま、くくっと右へとカーブすれば、後方から使いの鳥が猛スピードで羽ばたいてくるのが見える。
シカク「来い!」
シカクが右腕を上げれば、使いは掲げた腕へと止まる。
バサバサと動く羽が何枚か地に落ちて、それが少し落ち着きを見せた頃、シカクは足首につけられた書簡に手を伸ばした。
シカク「………!」
険しい面持ちで、木ノ葉から届いた返答に目を通していたシカクの視線が止まる。
キリ「援軍は見込めませんか?」