第69章 宝石商の護衛
…………………………
夕刻になり、市場もお開き。
シカク達は次の町へ向かう準備を始める。
依頼人「いやぁ本当にありがとう。助かったよ! またここへ来る時は、是非あんた方に警護をお願いしたい」
シカク「そう言ってもらえると、こちらとしても嬉しいですね」
そんな和やかな会話が繰り広げられる中、せっせと店じまいを手伝っているキリの姿が目に入る。
本日、誰よりも懸命に働いていたのは、間違いなくキリだ。
シカク「キリ、お前もよく頑張ったな」
予想を遥かに超える治安の悪さだった。
もしこれが他の下忍であれば、いくつか商品を盗まれていても仕方がなかった。
しかし、キリの無駄のない動きで、それらは全て阻止された。
シカクの労いの言葉に、キリは微笑んでぺこりと一度頭を下げる。
シカク「そうだ、キリ。お前にどれか買ってやろうか」
「好きな宝石を選んでいいぞ」と告げれば、気持ちだけで充分だとキリは慌てて首を振る。
依頼人「おお! あんた達になら大まけするよ!! あー、ちくしょうそれだったらあの宝石は売らずに取っておけば良かったな」
「店1番の宝石は売ってしまった」と、嘆く依頼人に、シカクは笑いをこぼす。
店1番の宝石を安く譲りたいと思うほど、キリの働きぶりを気に入ってくれたのだ。
シカク「ほら、雇い主もこう言ってくれてる。キリ、こっちに来い」
戸惑いながらもキリは片付けを中断して、こちらへと歩み寄る。
すると、依頼人は片付けかけていた宝石を再び取り出して並べ始めた。
依頼人「どれでも選んでくれ。あんたにはどんな宝石も似合いそうだ」