第69章 宝石商の護衛
「頼もしくて結構結構」と、売上も上々な依頼人は愉快そうに大笑い。
シカク「ははっ、まったく頼もしいでしょう」
はじめこそ、依頼人は二人一組の金を払っているのに、その内の一人が子供とは……とえらく憤慨していたが。
キリの働きぶりを見て、今では宝石の管理を完全にシカクとキリの二人に任せきりで、自分は売ることだけに専念している。
盗難を全く気にかけなくていいというのは、本人もひどく楽なようで、この町だけではなくずっとついていてくれないかと、頼み込まれたほどだ。
間違いなく様々な分野で能力が高いキリだが。この依頼人や先ほどの客といい、子供で、更に女だからと舐められてしまう事が多いのが、見ていて歯がゆい。
シカク(キリ本人は気にせずに、無意識にそう言うやつらを跳ね飛ばしちゃいるが)
依頼人「おかげさまで、商売に集中出来て飛ぶように売れてますよ」
機嫌良く札を数える依頼人は、鼻歌混じりにそれを束ねていく。
シカク「それは何よりです。まあ、キリもちっと過激ですがね」
「さあ、折られる覚悟がある人はそのまま続けて下さい」と、周囲に圧力をかけているキリに、シカクは苦笑する。
依頼人「はっはっは、まああいつらも一度痛い目を見るぐらいでちょうど良いでしょう」
「引き続きお願いします」と、札の整理を終えた依頼人は商売に戻る。
シカク(だがまあ……)
実際にやるかどうかは別としても、キリのそれはいい考えだ。
シカク「キリ、ちょっと来てくれ」
キリ「はい」
サラサラと紙に何かを書いて、シカクはそれをキリへと手渡した。
シカク「それ、前に貼ってろ」
そうして受け取った紙を見て、キリはこくりと頷き、自身の胸部に貼り付ける。
《※盗難に気付いた場合。その瞬間、腕を折らせていただきます》
そんな張り紙の効果は抜群で、手癖の悪い連中の行動も改善された。