第69章 宝石商の護衛
…………………………
ざわざわと騒がしい市場では、商人達にも客にも活気溢れる姿が見える。
そんな中でキリ達も、商売サポートを行っていた。
シカク「おい、何やってんだ。今手に持ってる宝石を戻せ」
『チッ』
シカクから摘発された若い男は、大きな舌打ちを土産に、足早に去っていく。
シカク「ったく油断も隙もねぇ」
雑に投げ置かれた宝石を、元の位置に戻しながら、シカクは周囲に目を光らせる。
シカク(しかし、手癖の悪い奴が多いな)
ちらりとキリの方を見れば、そこでも注意を受けている客達が見える。
キリ「今ポケットにしまったものを見せて下さい」
『何のことだ?』
上着のポケットに両手を突っ込んだまま、シラを切ろうとする男達に、キリはポケットへと手を伸ばす。
『おっと、急に何すんだよ』
キリ「そこに、あなたが盗んだ宝石があります」
キリの手を避けた男は、小馬鹿にするように笑いながら「証拠はあるのか、それが客に対する態度か」等と、意味のわからない御託を並べる。
キリ「………」
ふぅ、と小さくため息をついたキリは、次の瞬間、男の腕を掴み上げた。
がっと少々荒めに腕を捻れば、男は苦痛の表情を浮かべながら膝を着く。
キリ「証拠なら、ここに」
そう言ってキリは男のポケットから取り出した宝石を、手のひらの上に転がした。
パッと暴れる男の腕を離してやれば、男は腕を押さえながら、キリに暴言を吐く。
そんなマナーのない客層に、さすがに疲れが見えるキリは、ゆっくりを口を開いた。
キリ「次からは……キリがないので、次からは腕か手首を折らせて頂きますね」
「しばらく、盗みが出来ないように」そうさらりと告げたキリに、冗談なんて雰囲気はまるでない。
一緒になって暴言を吐いていた連中が静寂に包まれた。
『『『……………………』』』
そんな様子を見て、依頼人はご機嫌だった。
依頼人「いやぁ、綺麗な顔して恐ろしい事を言う子だね」