第69章 宝石商の護衛
あと少し、ちゃんと一人で生活が出来るようになれば、その時は改めて訪れよう。
そんな考えが、どれほどシカクに伝わっているかはわからないが、全く仕方ないというように、困ったような笑顔を見せたシカクは、ポンポンとキリのなでる。
シカク「おう。いつでも来い」
「出来るだけ早めにな」と、口角を上げたシカクに、キリも微笑み返す。
キリ「はい」
「よし」と、最後にキリの頭を強めになでてから、シカクは手を離した。
シカク「お喋りはここまでだな。こっからは任務に集中するぞ」
キリ「はい」
すると、キリはもうシカクから視線を外して、前を向いた。
先ほどまでもそう気を抜いているわけではなかったが、キリの空気が一変する。
こうなると、キリはこちらから話しかける以外は、私語ひとつこぼす事はない。
おそらく、任務以外のことを考えてもいないだろう。
そんなキリを見ていると、もう少し気楽にしてもいいのではないかと思ったりもするが、実際それが油断になると困るので、意見することが出来ずにいる。
シカク(本当にこの歳で、恐ろしいぐらいの集中力だな……)
そういえば、以前イチカが訪れた際。
ともに修業をみたイチカの集中力も、相当に高かった。
シカク(ま、もとの性格がイチカちゃんは散漫としがちで、キリは精神力がある分、差が出ちゃいたが)
それでも、イチカもその辺の下忍では到底敵わない。
まったく、樹の里の薬の効果は侮れないものだ。