第69章 宝石商の護衛
第69話 宝石商の護衛 喪失
任務を受けて、第11班の二人は里外に出ていた。
特別、急ぐ旅でもないシカクとキリは、のんびりと森の中を歩く。
シカク「キリ」
キリ「はい」
シカクがじっとりとした視線を向ければ、キリは少々困り顔で首を傾げる。
シカク「お前よぉ、ちっとつれねぇんじゃねーのか」
そう言って、がっとキリの肩を抱けば、キリは更に困り顔を強める。
シカク「家、出たっつってもよ。たまにはうちに寄ってくれてもいいんじゃねぇか」
キリ「!」
シカクは担当上忍なのでまだこうして、キリと会う機会があるからマシではあるが。
ヨシノとシカマルは、極端にキリに会うことが少なくなってしまった。
シカク「母ちゃんもシカマルも、寂しがってんぞ」
キリ「すみません。……彼とは、少し前に会いました」
そう声を落としたキリに、シカクは内心でため息をついた。
シカク(この様子じゃ、まだ拗れてるみたいだな)
キリ「もう少し。落ち着いたら、また顔を出させて下さい」
キリ(……)
本当は、もっと早くに一度奈良家に訪れるつもりだった。
世話になっていた礼と、そしてきっと心配しているだろうから、元気でやっていると伝えにいくつもりだった。
予定では、一人の生活に数日で慣れて、その挨拶に行くはずだったのだが。
シカクと、ヨシノと、シカマルがいない家が、予想していたよりも、何倍も寂しかった。
本音を言うと、まだキリの体はそれに慣れてくれない。