第68章 雨傘
第68話 雨傘
キリが奈良家を出て、ニ週間が経過した。
キリ(………)
このニ週間で、わかったことがたくさんある。
キリ(一人は、思っていたよりもずっと寂しい)
それでも木ノ葉へ来たばかりの頃は、一人でいる方が気楽だった。なのに、どうして今はこう、誰もいない暗い家へ帰ることを寂しく感じてしまうのか。
家を出てから五日ほど経った頃なんて、修練場からの帰り道、キリの足はアパートではなく、シカク達がいる奈良家へと向かっていた。
奈良家が見えた瞬間ハッと我に返ったが、無意識に体が帰ってしまうほどには、馴染んでいたようだ。
シカクが、ヨシノが……そして、シカマルが。
どれだけキリに、あたたかな居場所を与えてくれていたのか、身をもって実感した。
キリ(でも……)
今回、奈良家を出た1番の理由。
それは上手く作用しているように思う。
このニ週間、シカマルと一切会うことは無かった。
里内で、偶然会うこともなく。
修練場にシカマルが何度か訪れた事はあったが、その気配に気付くたびに、逃げるようにして身を隠した。
会いたいと、やはり思ってしまうが。
隣にいた頃よりは、痛みが少ない。
キリ(このままずっと、会わなければ……)
いつか、この気持ちも小さくなって、消えていってしまうだろう。
キリ「あ……」
頭に雫が当たるのを感じて、キリは空を見上げる。
灰色に広がる曇り空からは、ぽつりぽつりと雨が降り、どうやらこれから本降りになりそうだ。