第67章 離れた距離
カカシ「………」
とことこと、シカマルのもとへと戻れば、シカマルから縋るような眼差しを向けられる。
カカシ「シカマル、あの……」
シカ「……カカシ先生でも駄目っすか」
しゅんと、肩を落とすシカマルの姿が見ていて切ない。
カカシ「いや、あのね。キリは……」
「凄く言いづらいんだけど」と、前置きをしてから、カカシは極力優しい声色で言葉を落とした。
カカシ「キリね、部屋にいないよ」
シカ「………は?」
カカシ「あーうん。キリは、部屋にいないんだよねー」
「気配ゼロ」と、胸の前でバツを作ってそう言ってみる。
シカ「っ!!!」
すると地面に膝をついて、並々ならぬ羞恥心を耐えようとしているシカマルに、カカシは苦笑いを浮かべた。
シカ「まじかよ……」
「ははっまいったねー」と、わざと明るく冗談混じりに言って、シカマルの羞恥を少しでも軽減させてあげようと思ったのだが、どうやら効果はなかったらしい。
…………………………
顔を真っ赤にさせて、落ち込んでいるシカマルは、これまでの自分の行動に頭を抱えていた。
任務帰りに、汗まみれ砂埃まみれな状態なのも気にかける余裕なく、キリの家に駆けつけて。
シカ(っ………)
夜中に必死こいて、隣人に怒られながらドアを叩いて。
シカ(うっわ……)
さらにそれでは止まらず。
【 キリ……キリ、起きてるか?】
【夜中に悪い。どうしても、お前と会って話してぇ】
【少しでいい……頼む】
これを、誰もいない無人の家に、一人で語りかけていたというのだ。