第67章 離れた距離
第67話 出来た距離
昨日、シカマルが家に帰宅した時。
そこにキリの姿はなかった。
シカ「ただいま」
その日は、10班での修業に精が出て、全員がくたくたになるまで熱心に取り組んだ日だった。
修業終わりの時点で、もういつもよりもずっと遅い時間帯で。
ぜぇぜぇと息をつきながら、腹が減ったとわめき散らすチョウジに、いのも乗っかった。
自分で言うのもなんだが、今日は中々良いチームワークで、質の良い修業が出来たと思っている。
そして、それは指導しているアスマも同様だったようで「焼肉へ連れてってやる」と、気前よく先導した。
疲労感たっぷりの重たい身体。
でも、和気あいあいと会話を弾ませながらの食事が、そんな疲労感など何倍も上回って居心地が良い。
チョウジ達と別れた後の帰り道も、疲れは充実感に変わり、うまい飯で満たされた腹に満足感を得て。
これで一歩、いや半歩分ぐらいはキリに近付けたのではないか、なんて。
気分は上々だった。
こうした時間の積み重ねが、結束力や絆を高める。
だから、この日が間違いであったとは思わない。
けれど。
夜遅くに帰宅した時、シカマルは何とも言えない喪失感を得る事になった。
居間の襖を開ければ、どこか雰囲気のおかしいシカクとヨシノの視線に気付く。
帰宅が遅れた理由をシカクとヨシノに伝えれば、どこか納得いかない、又は残念な面持ちを見せた二人に、シカマルは首を傾げることになる。
シカク「タイミング悪ぃな」
シカク(せっかく母ちゃんがお前のために引き伸ばしたってのに)
シカマルの知らぬところで家を去るのは、あまりにも不憫だろうと、ヨシノは気を回してくれたのだ。
だが、その優しさも結局は届かずに終わる。
キリが家を出る前の最後の食事は、シカク夫妻とキリの三人で。キリはシカマルと会う事なく出立してしまった。