第66章 別々の道
「勝手に話を進めるな」と、たまらずシカクが席を立ってヒアシのもとへ歩み寄れば。
「なんだお前は下がっていろ」とでもいうような腹立たしい顔を向けてくるヒアシに、再びゴングが鳴り響く。
ヒアシVSシカク、第三回試合開始の合図だった。
シカク「何勝手に話進めてんだ」
ヒアシ「聞いていたのか。それが最良だと思わないか」
会議もお構い無しにぶった切って、シカクとヒアシの戦いが始まり、周囲は困惑するばかりだった。
シカク「本人の承諾もなく、そんな大事な事決めていいわけねぇだろ」
「ちょっと泊まりに行くのとはわけが違う」と言えば、ふむとヒアシは考え込むようなそぶりを見せる。
ヒアシ「……では、キリ本人がいいと言えば、日向で預かる事に異論はないな?」
シカク「ああ、そりゃあ本人が……」
いいと、言うわけがないと思っての発言だったが。
シカク(……待てよ)
何せ、この日向家にはヒナタがいる。
キリが日向家に行く可能性は低いだろうが、ヒナタがいる限りゼロとは言えない。
シカク「……いや、待て。そもそもなんで日向家に行かなきゃならねぇんだ。んな事しなくても、今はうちで預かってる。それで問題ないだろうが」
ヒアシ「日向家には、絶えず人がいて家が無人になる事はない。仮にキリが反逆を企てたとしても、食い止める事は容易だ」
「みなも安心だろう」と、そういけしゃあしゃあと言い放つヒアシに、シカクはくっと鼻に皺を寄せた。
シカク「あんたそもそもキリが悪さするなんて微塵も思っちゃいねぇだろうが!」
「ただキリの親になりたいだけだろう」と、図星を指さしてやれば、ヒアシはその件には触れずに、咳払いをして話を流す。