第66章 別々の道
シカク「今じゃあ日向家が、宗家も分家も揃ってキリについてるからな」
カカシ「確かに、あれは強烈でしたね」
カカシが苦笑いをこぼす理由は、以前、重役を集めて行われた会議中に、起きた出来事だ。
いまだにキリが密偵の可能性があるだの、危険因子だのと糾弾する輩がヒートアップしてきた頃。
そこにひときわ重圧のある声が響いた。
ヒアシ「今……話に出ているキリという子は、娘ヒナタの友人であり、我々とも懇意な間柄だ」
『!!』
「いつまで下らぬことを話し続けるつもりだ」と、声を低くしたヒアシに、周囲は先ほどとは打って変ってその温度を下げる。
ヒアシ「仮に……この場にキリに対し、よからぬ考えを企てている者がいるのなら。その時は、この日向家が相手になると思え」
それが、トドメの一撃だった。
肌がチリチリするような、ヒアシの言葉に気圧されて、反勢力は完全に押し黙ってしまった。
シカク(日向ならではの力技だな)
悔しいかなシカクには、真似出来ない芸当だった。
名門といえば奈良家もその部類であり、血統も地位も充分に認められている。
長く木ノ葉に尽くしてきたシカク達も、発言力はあるが、やはり総戦力でいえば日向と圧倒的な差がある。
シカク(俺らは頭数が多い家系じゃねぇからな)
個々の能力もさることながら、門下生も含め相当な人数が揃う日向家が、敵に回るというのが、どれほどの脅威になるかわからない愚か者は、木ノ葉の忍にはいないだろう。
ピリピリとした緊張感が漂う会議に、今度はヒアシの御付きの人物が口を開いた。
『先ほどから非難していた皆さんは、キリさんと直接話した事はおありで? 以前、宗家へ泊まりに来られましたが、とても礼儀正しく気持ちの良い子でしたよ』
「また来て欲しいですね、ヒアシ様」と、穏やかな口調のおかげで、少し緩和されたこの空気に、反勢力もようやく詰まっていた息をつけた。