第66章 別々の道
はぁ、と今日何度目かわからないため息をついて、シカクは解説を始める。
シカク「あの頃のキリは、常に危うかった。本人に生きる意志が無かったのは、カカシも気付いてただろう。あん時に奇襲を受ければ、状況によっちゃキリはすぐに死を受け入れた可能性が高い」
カカシ「……そうですね」
シカク「だから、無理やりにでも近くにいる必要があった。もちろん、当時も何度か家を出たいとは言われてたけどな」
その時は、全て問答無用で却下したと、口角を上げてシカクは告げる。
シカク「あの頃、自分が普通に生きているのが申し訳ない、迷惑をかけないために人に関わりたくない。そんな理由で家を出たいっつーキリに、俺も〈隊長命令〉でしかそれを止める術がなかった」
「でも今は……」と言って、シカクは顔を上げる。
シカク「キリ本人に生きる意志がある。そうなりゃ、向こうさんもキリ相手にそうそう手は出せねぇよ」
シカク(イチカちゃんとも、約束してたしな)
生き抜くために、応戦する気満々のキリならば、敵もその攻略は簡単ではない。
そして当初とは、大きく変わった事がもうひとつ。
シカク「今のキリには味方も多い」
当初はシカクや火影、カカシ。ほんの一握りしかいなかったキリの後ろ盾。
当初は、同胞殺しの親殺し。そんな悪名を背負っていたキリを良く思っていなかった者たちも。
木ノ葉にいるキリを見て、人柄を知り、態度を柔和させている。
常に里内の見張り役として、番をしている暗部たちも、それは該当する。
今なら、キリに危険が迫っている事に気付けば、キリの手助けをしてくれるだろう。