第66章 別々の道
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緊急任務さながらのスピードで、里内を駆けて、シカクは上忍待機所のドアを蹴り破るようにして開く。
仮にこのドアの向こう側に人がいれば、ただでは済まなかっただろう。軽く骨折は免れないほどの攻撃力があるドアオープンに、一同の視線はシカクへと注がれる。
『…………』
相当な騒音だったが、誰一人としてシカクに文句を垂れるものはいない。それどころか、狩人のような目をして辺りを見回すシカクに、皆視線を逸らしていく。
そして、シカクの視線が、ある人物を捉えた。
シカク「カカシィィ!! てめぇ表出やがれ!!」
狩人に狙われたウサギは、書類を手にしたまま、微笑を浮かべて固まった。
カカシ(うっわ……狙いは俺かぁ)
終わった。カカシはそう思いながらも、ひとつ悪足掻きをしてみせる。
カカシ「えっ……と、その。まだ仕事が」
ははっと乾いた笑いと共に、書類をひらひらとなびかせていると、突如その悪足掻きアイテムが消えた。
左を見れば、アスマの姿。
その手には、たった今まで持っていたカカシの書類がある。
アスマ「ほとんど終わってるじゃねぇか。俺が出しといてやるよ」
カカシ(くっ、いつもそんなこと言わないでしょーよ)
熊さんが要らぬ優しさを見せる。
まだ前に仕事を押し付けたのを、根に持っているのかもしれない。
カカシ「!」
どんっと背中に衝撃を感じて、右を見れば紅の姿。
カカシ「ちょっ、やめ……っ」
ぐいぐいと背中を押す紅に、抵抗しようと足に力を込めれば、背中の手がさらに増える。
ハヤテ「ごほっ……早く行って下さい」
ゲンマ「頼むから俺らまで巻き込まないで下さいよ」
カカシ(ひ、酷い……)
こいつらは目の前にいる狩人に、一匹の犠牲を出す事によって、自らを守ろうというのだ。
悪逆非道この上ない。
カカシ「ねぇ。せめて、誰か一緒に行かない?」
「「「「とっとと行け」」」」