第66章 別々の道
そんなキリの姿を見て、シカクは小さく視線を落とした。
シカク(それが……わかってるならいい)
ここに確かにある愛情が、キリに伝わっているなら。
ここに味方がいるのだと、キリが決して一人ではないことが、きちんと伝わっているなら。離れていても大丈夫だろう。
シカク「……寂しくなるな」
ヨシノ「!」
シカク「キリ。ここを出るなら、条件がある」
ヨシノ「ちょっとあんたっ……!」
それを許すのかと、立ち上がりかけたヨシノをシカクは手で制する。
シカク「キリが、自分で考えて出した答えだ」
ヨシノ「そりゃ、そう……だけど」
でも、と語尾を弱めるヨシノの気持ちは、よくわかる。
シカクだって、出来るならばここに居て欲しいと思っている。
キリ「条件とは何ですか」
そう言って、こちらを見るキリの瞳の色は、この家に来た当初とはまるで違う。
冷えた無機質な青は、優しく穏やかな青に変わっている。
シカク「もし、里内で何者かに奇襲を受けた際は、直ちに周囲へ助けを求めること。俺たちにはもちろん、カカシ、五代目、山中や秋道のところでもいい。自分一人でなんとかしようとするな」
「近くにいる誰でもいい。力になってくれそうな奴を見かけたら、助けを求めろ」と告げて、シカクは席を立った。
シカク「……その時、本当にやばい奴が相手だったら。なりふり構わずどうにかして俺のところまで逃げてこい。そうすりゃ、相手が誰だろうと俺が必ず守る」
そう言ってキリを抱きしめれば、腕の中で、小さく揺れたキリの返答が聞こえる。
キリ「……はい」