第66章 別々の道
第66話 別々の道
シノのおかげで少し軽くなった心で、キリは病院から家までの帰路についていた。
キリ(……情けない)
カカシにも、シノにも、恋心を気付かれて心配をかけて。
話を聞いてもらって、元気付けてもらって、それでようやく浮上出来るぐらいに参っているのだ。
キリ(……好き)
いくら考えても、シカマルを好きだった。
本音を零してしまえば、好きで仕方ない。
キリ(側にいればいるほど……好きになる)
正直、舐めていた。
自分の気持ちひとつ、少し時間が経てば潰してしまえると思っていた。
キリ(っ……)
今も頭の中に、シカマルが優しい瞳で笑ってくれるあの笑顔を思い出して、それだけで胸がきゅっとなる。
同じ家に住んでいてもいつだって。顔を合わせれば嬉しくて、隣の部屋にいるだけで嬉しく思う。
もうこれ以上好きになれないのではないかと、そう思うぐらいに好きなのに。シカマルの優しさが見えると、努力家なところが見えると、どうしようもなくまた惹かれて。
それどころか、何気ない表情や仕草にまで、胸が鳴る事がある。
キリ「………はぁ」
大きくゆっくりと息をついて、キリは奈良家に足を進める。
タンッと居間の襖を開ければ、ヨシノとシカクがにこりと笑顔で迎えてくれた。
ヨシノ.シカク「おかえり」
キリ「……ただいま」
キリもにこりとそう返せば、おいでおいでと手招きをされるままに、キリはヨシノに近付いていく。