第65章 優しい人
キリとシカマルは、第三者から見れば、そういった風に見られているのだろうか。
【一番一緒にいる】
【あいつの方がお前をよくわかっている】
そんなシノの言葉が、心をくすぐるようで、嬉しいような気持ちと。
その反面で、この気持ちには蓋をすると決めたのだと、波紋を広げていくそれを必死で殺そうとしている自分がいた。
キリ(………)
そこへ、検査結果を記した紙を手にした医療員が、戻ってくる。
『あっシノさん、こんにちは』
シノ「ああ」
にこやかに挨拶を交わす二人に、キリは視線を行ったり来たりとさせる。
キリ「二人は知り合いなの?」
シノ「ああ、俺の母親が随分と世話になっている」
『そんな、大したことはしていませんよ』
首を振って、謙遜する彼女に、シノは柔らかな声音を発した。
シノ「いや。おふくろも感謝していた。親子共々、礼を言う」
感謝の言葉に、気恥ずかしそうに一礼した医療員を見て、ふと口角を上げたシノは愛嬌たっぷりの虫を自らにしまい込む。
シノ「まだ用があるんだろう。引き止めて悪かった」
そんなシノにありがとうと伝えれば、シノは「気にするな」と一言落として、踵を返した。
『シノさん、優しい方ですね。お母様が入院されてから病院で会いますが、よくお話をしてくれます』
キリ「ええ、優しい人ね」
よく話す……のかどうかはわからないが、心優しい人物であることは間違いない。
『それでは、私たちも病室に戻りましょうか。検査結果の説明をさせて頂きますね』
キリ「お願いするわ」