第64章 幾多の恋心

『残念ながら木ノ葉では取れない薬草なので、うちでの製薬は出来ませんが、こうして輸入することは可能です！』

「効き目があるようなら、たくさん仕入れてしまいましょう！」と、医療員は悪戯な笑顔をみせる。


キリ「あ……」

『どうしました？ 何か不安な点がありましたか？』


キリ「い、いえ、無いわ。大丈夫」

『本当ですか？ 何か気になることがあれば、小さな事でも伝えて下さいね』


ぼっとキリの顔に、熱が集中したのがわかる。

キリ(恥ずかしい……っ)


彼女はきちんと仕事をしようとしていて、仕事をするためにここに来ている。

惚れた腫れたと、勝手に一人で右往左往しているのが、酷く滑稽に思った。


優しく話し聞かせるような医療員の言葉。

それは完全に医療従事者が、患者に話す時のそれで。なおさらキリの羞恥心が高まる。


「それでは治療を始めますね」と、告げた医療員にやっとこさで頷いて、キリはテキパキと出際の良い彼女の施術をただ見つめるしかなかった。



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『これで終わりです。あとは朝晩、薬を塗り直して下さい。キリさんでしたら、大丈夫だと思いますが、薬を塗る箇所だけお間違えのないようにお願いします』

「4種類もお渡ししているので」と、医療員はキリの負傷箇所と薬の種類を明記したメモを手渡した。


キリ「ありがとう」

『以前の結果は今日お聞きになりますか？』


「それであれば、少し準備をしてきます」と言う彼女に頷けば、短くしばった髪をピコピコと左右に揺らしながら、彼女は退室する。


それを見送ったキリは、何もない天井を見上げて、長いため息をついた。