第63章 身を置く場所
そんなやり取りを見兼ねて、シカマルがわざわざ話を逸らしてくれた程に、カカシはタチが悪かった。
さらに、せっかくシカマルが上手く話を逸らしてくれたのに、流れかけた話題をまた自然な流れで掘り返すという迷惑っぷり。
しばらくの間、そんなカカシとシカマルの戦いが繰り広げられていた。
その時、キリはシカクやシカマルの待つ優しさに、改めて感謝したものだ。
班が違えば、対応はこうも異なるらしい。
キリ(………)
【お前の師は誰だ】
そんな雷影の問いかけに、真っ先に頭に浮かんだ人物はシカクだった。
実のところ、樹の里にも師と呼べる人物がいる。
キリ(ナガレさん……)
シカクのように、戦闘面に特別秀でているわけではないが、樹の里の施設を指揮をとっている人物だと言っていい。
ナガレを表すには、研究者というのが一番近い。
キリたちが使用する薬の開発を行い、処方するのもナガレの指示のもと行われる。
それ以外にも、ナガレは人に対する思いやりや、仲間の大切さ。
人として生きる上で、かけがえのないものを沢山教えてくれた人物だった。
そんな施設の母、施設の父とも呼べるナガレを差し置いて、真っ先に頭に浮かんだシカク。
そして、いつの間にか。
自分は木ノ葉隠れの忍であると、心がそう憶えていた。
木ノ葉隠れの人々が、実際にそれを容認しているかどうかは別として、キリ自身がそう感じていたのだ。
そのことに気付いた時。
どうしてか悲しいわけではないのに、少し泣きたくなった。
キリ(ヒナタ……)
特に何を相談するつもりだというわけではないが、無性にヒナタの顔が見たくて、話をしたかった。
キリ(早く、帰ってこないかな)
長期の任務に出ている彼女の無事を祈りながら、キリは重い腰を上げて、自室を出る。