第63章 身を置く場所
第63話 身を置く場所
雲隠れの里、雷影からの要請任務を終えて、木ノ葉隠れの里に帰還したあと。
キリは奈良家の自室で、一人頭を悩ませていた。
キリ(いつから……だったんだろう)
雷影との対話の中で発覚した、自らの思いの変化。
人払いをした後の雷影の話というのは、いわば引き抜きの誘いだった。
木ノ葉隠れではなく、雲隠れに来いと。
過去にもキリは、雷影と出会った当初に一度言われたことがある。
それを今回は正式な申し出として、話を頂いた。
あまりに唐突な誘いに、戸惑いを隠すことが出来ず、キリが言葉を詰まらせる事になったのは昨日の事だった。
…………………………
キリ「え……と、それ、は」
雷影「言葉通りの意味だ。樹の里からどのような経緯で、木ノ葉にいるのかは知らぬが、そこに必ずしも木ノ葉でなくてはいけない理由がないのならどうだ?」
キリ(………〈必ずしも〉木ノ葉で……ならなくては、いけない理由……)
雷影「お前が雲隠れに慣れるまで、衣食住にも手厚い対応をするつもりだ。悪い話ではないだろう」
キリ「……なぜ、私なんかにそのようなお話を?」
そう問いかければ、雷影はトントンと自らの横面を手の甲で示した。
そこは、キリが以前、雷影に蹴りを入れた箇所だった。キリが少々対応に困っていると、雷影は軽快な笑い声をあげた。
雷影「ワシが気に入ったからだ。お前に器量が見えた。子ども相手に油断していたとはいえ、あの場にいた他のガキ共であれば、この雷影に遠く届いておらん」
初対面の時とは異なる、雷影の好意的な態度と声色。何か裏があるわけではなく、本当に一人の忍として欲されている事がわかり、キリは押し黙る。
雷影「雲隠れに来い。お前は強くなる。ワシが直々に指導してやってもいい。木ノ葉の腑抜けどもと一緒にいては、強くなれんぞ」
キリ「!」