第15章 知らないこと
受付にいた医療事務の女の人は、パラパラと帳面をめくり、その手があるところで止まった。
「キリさん、キリさん……。あら…ごめんなさい。まだ治療が終わってないみたい。その後も検査があるわ。夕刻には終わると思うけど、面会時間は終わっているわね」
シカ「そう……っすか、また明日来ます」
昨晩、すぐに始まったはずの治療がまだ終わっていない。
それは、暗にキリの容態の悪さを表していて、シカマルにどうしようもない気持ちが込み上げる。
半日も続く治療。
その痛みはどれほどか。いつ完治するのか。果たして、完治する傷なのか。今後も支障が出るような深い傷を負ってしまったのではないか。
本来、その傷を負うべき自分は、かすり傷ひとつないというのに。
悪い考えが、頭の中を巡る。
意気消沈しつつ病院から出ようとすれば、聞きなれた声が聞こえてくる。
いの「あら?シカマルじゃない!やっほー」
いのは手を上げて、ぱたぱたとこちらに歩み寄る。
シカ「よぉいの、なんでここにいるんだ?」
いの「わたしはお店のお使いで花を届けに来たのよー。それよりもあんたの方がなんでこんなとこにいるのよ?」
シカ「あー……、まぁな」
答えにならない答えを言えば、いのはすぐに様子に気付いて心配そうに顔を覗き込んでくる。
いの「ちょっと、どうしたの?何かあった?」
病院を後にした二人は、これまでのことを話しながら帰り道を歩く。