第15章 知らないこと
朝早くから、もはや走っているという表現の方が近い早足で、シカマルは病院へと向かう。
昨晩、木ノ葉に戻ってすぐにキリは医療班に付き添われて、病院へ行くことになった。
それに同行し、あとから帰宅したシカクに聞くと、キリは集中治療室での治療が始まったらしい。
シカ(……そんなに重傷なのか)
雲隠れの抜け忍は、雷影からの攻撃によって致命傷を負っていた。
反して傷一つない自分の体を見て、シカマルは歯噛みをする。
シカ(あの時、あいつは俺の後ろにいたんだよ)
シカマルは、あの時の場面を思い起こした。
シカクとカカシのが「伏せろ」という声に反応して、即座に隊の最後尾へとキリは向かった。
おそらく、それは少し離れて後方にいたシカマルとヒナタの援護に入るためだろう。
そう、馬鹿みたいに突っ立っているだけだったシカマル達のために。キリは瞬時に、シカマルたちが穴だと判断し、その穴を埋めに来たのだ。
初めての忍対忍の戦い。
突然の抜け忍との対戦に加えて、雷影からの奇襲。
しかもその全てが不意の出来事だった。下忍になって三ヶ月やそこらの忍に、その対応力を求めるのは厳しいだろう。
けれど。
シカ(……サスケは、あの状況ですでに動いてた)
そして、言わずもがなキリも。
動けなくて、普通なのだ。この二人が同期の中で抜きん出ているのはわかっている。
だから、里に戻った後も、狼狽えているだけに終わったシカマルたちを上忍二人が咎めることは無かった。