第59章 敵の罠
キリ「あなたたち大丈夫? ……っ!」
三人の顔色を窺った時、意識が遠のきかけて、キリは瞬時にシカマルの腕を掴み、後退する。
シカ「キリ?」
キリの対応も時すでに遅く、じわりじわりと幻術に呑まれていく。
シカ「!」
大丈夫かとキリの顔を覗き込んだシカマルは、次の瞬間、ぼんやりと虚ろな瞳に変わる。
キリ「っ、シカクさん!!!」
途切れそうな意識の中で、キリは最後の力を振り絞って叫んだ。
キリ(くっ、もう……)
辺りに、敵の気配は少しも感じられなかった。
だからこそ、シカクはこの場をキリに預けて、これから進む山岳の経路確認に出ていた。
シカクは、自分を信じて任せてくれたのに、自分の不甲斐なさに腹が立つ。
キリ(うち、は、サスケは……)
彼ならば、と望みをかけるが、サスケも周囲同様にその場に佇んでいるのが見えて、キリは顔を歪ませた。
もしもこれが、敵の奇襲などであったのなら、キリもサスケも、まだ対処のしようがあっただろう。
でもそれは並々ならぬ努力の成果であり、度重なる訓練の結果である。
アカデミーや、樹の里で少しは学んではいたが、実戦でその対処をするには、あまりにも幻術に対しての経験値が浅過ぎた。
キリ(……っ)
一度、激しく視界が歪んで、ついにキリの精神も何者かによって乗っ取られる。