第59章 敵の罠
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ほんの数十分前。
雲隠れの里に入り、しばらく走ったところで、キリ達は小休憩を取ることになった。
そこで、用を足したいとナルトからの申し出があり、付き添いついでにカカシがみんなの分の水を汲んでくると同行した。
ナルト「うぅー漏れるってばよ!」
カカシ「ナルト、そこの川で水を汲んだらすぐに戻るから、それまでここで待機」
ナルト「りょーかい!」
ごそごそとズボンのチャックを下ろしながら、茂みへダイブし、ナルトはようやく目的を達成した快楽を得る。
ナルト「はー、危なかったってばよ。あ、あれってばもしかして!」
見上げれば、赤い木の実が沢山実っているのが見えて、ナルトは木の下へと急ぐ。
ナルト「やっぱり! ラッキー! すげぇいっぱいあるってばよ!!」
この木の実は甘く、栄養価も高い。そのため、任務中の忍や旅商人たちから重宝されている。
そうと分かれば。みんなに持って帰ってやろうと、木に登って、木の実を次々と採取していた時、ナルトはあるものに気が付いた。
ナルト「ん? これなんだってばよ」
そこにあったのは、手の平サイズの正方形の紙。そこには小さな文字と模様が書かれていた。
不思議に思い、じっとそれを見つめていれば、次第に意識が遠のいていくのを感じる。
ナルト「っ、あ……」
一度、ぐらりと歪んだ視界。
次の瞬間には、ナルトは夢の中にいて、うっとりと夢心地に浸る。
この時。
それが敵の仕掛けた幻術のトラップだとわかる者が誰もいなかった。
意識が完全に夢の中にあるナルトの身体は、ふらりと動き、木から飛び降りる。
ボトボトと木の実を落とし、ひと握りだけの木の実を手に、ナルトの身体は仲間の元へと足を進めた。