第57章 迷い
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シカ(………なんだ?)
ちらりとキリの行動に目を向けて、シカマルはその違和感に首を傾げた。
それはここ数日、シカマルが時折感じていたもの。
シカ(ただ、何がって言われるとイマイチわかんねぇんだよな)
一応、シカクやヨシノにも、キリの様子がおかしくはないかと聞いてみたが、二人からは特に変わった所はないと返答が来た。
他でもない父と母にそう言われるのなら、やはり気のせいなのかもしれない。
ただ、その自分でも、何に思っているのかわからないぐらい小さな違和感を感じたのは、一度や二度ではなかった。
その場にキリとシカマル以外の誰かいると、それはたちまちわからなくなる。
しかし、それはキリと二人でいる時に、顔を出す事があった。
シカ(……別に何かされてるわけじゃねえけどよ)
話もすれば、無視をされることなんてのもない。
言えば、笑われてしまうような事かもしれないが……。
ほんの少し、キリが以前よりも遠く感じる。
そばにいる時。一歩、こちらがキリへと近付けば、キリはそれを黙認する。
だが、その縮まった一歩が、気付いた時にはもとに戻っているのだ。
いつそうしたのか、まるでわからないぐらいに、本当にいつの間にか。
だから、その違和感の理由がわからなかった。
今だって、違うと言われれば、シカマルの勘違いだったのかと思えるレベルだ。
シカ(だー、考えてもわかんねぇ)
シカマルはキリに、何かをしてしまったのだろうか。
それとも、本当にただの勘違いなのだろうか。
一人でそんな事に考えを巡らせていても、らちがあかない。
勘違いならば、それで良し。
もし何か理由があったなら、謝って、話し合えばいい。
キリとの悩みを、自分一人で悶々と考えた所で、良い答えなど導かれないだろう。
シカ「なぁ、キリ。ちょっと話が……」
シカク「待たせたな」
シカ「!」
悪い悪いと遅れて登場したシカク。
シカ(くそ、タイミングわりぃな)