第57章 迷い
第57話 迷い
あれから数日が経ち、 キリは目的もなく、里内を彷徨っていた。
シカク班でのCランク任務も滞りなく終えて、今からはシカマルを交えて修業を行うらしい。
所用があるから、後で合流するといったシカク。
それまでシカマルと二人きりになるのを避けたくて、 キリは訳もなく人通りの少ない道を選んで歩く。
キリ「はぁ……」
無意識に落ちたそれは、本日何度目のため息だろうか。
最近、一人になるとつい、ため息をついてしまうようになった。
以前カカシと話した事で、キリのすべき事がわかった。
進むことも、下がる事も出来ずに、ただその場で足踏みしていたキリに、カカシは道標をくれた。
キリ(………)
でも。あの時、キリはカカシに一つだけ嘘をついた。
彼……シカマルに好意は抱いていたが、それ以上を考えたことは無かったと。
そう考えられていたのは、少し前までの話だ。
いのとチョウジと、甘栗甘に行った後から、以前よりどうしてもシカマルを強く意識するようになった。
ただただ好きだと思っていたそれは、いつしか変わった。
キリ(あの頃なら、簡単に……)
この気持ちを抑える事が、出来たのだろうか。
もうすでに、キリは考えてしまっている。
好きだと、そう伝えたなら、シカマルはなんと言うのだろう。
もしも、シカマルと恋人同士になる事が出来たら。
そうすれば、理由なく手を繋いで歩いたり出来るのだろうか。
理由なく……もっとそばにいられるのだろうか。
そんな、数々の叶わぬ思いを馳せていた。