第56章 それぞれの距離
それならば良かったと、ホッと胸をなでおろした様子のシカマルに、医療員はにこりと笑みを浮かべる。
『以上で説明は終わりますが、何か質問はありませんか?』
キリ「ないわ」
シカ「俺もねぇな」
『では、これでキリさんは退院となります。お疲れ様でした』
キリ「あなたも、ありがとう。世話になったわ」
シカ「おっし、じゃあ家に戻るか。キリ、荷物ここにあるので終わりか?」
キリ「そう……だけど、自分で持つわ」
シカ「いいっての」
せっかく迎えに来たのだから、これぐらいやらせろ。いや、自分で持てる。
そんな戦いを繰り広げていれば、くすくすと医療員の笑い声が聞こえる。
『本当に仲が良いですね。羨ましいです』
シカ.キリ「!!」
その言葉に、シカマルは少し照れたように頬をかいて、対するキリは複雑そうに眉を下げた。
そのほんの少しの隙で、ひょいっと荷物を奪われてしまって、シカマルはそのまま病室を出ようとする。
『シ、シカマルさんっ』
シカ「?」
その裏返った医療員の言葉に、シカマルはくるりと振り返る。
『ま、また、その……病院に足を運んで頂けますか?』
シカ「? おう」
ふりしぼるように言った医療員の言葉に、シカマルは了承する。
『!! あ、ありがとうございます!』
キリ「………」