第56章 それぞれの距離
第56話 それぞれの距離
『それでは、退院おめでとうございます』
キリ「ええ、ありがとう」
キリの検査入院が決まってから、五日目の現在。
午前中に様々な数値の確認を終えて、医療員の高い声音が、キリの病室に響く。
『この五日ではとても、キリさんの身体について調べきる事は出来ませんでした』
自分の力が及ばずで、本当に申し訳ないと、医療員は眉を下げた。
それに「気にしないで」と微笑めば、医療員も愛らしい微笑みを返してくれるそれは、やっぱりいつ見ても可愛いなと、純粋にそう思う。
『そのため、キリさんにはこれからも定期的に病院に通って頂く事になります』
キリ「わかった」
『頻度でいうと、月に3度程度ですね。任務の帰りや修業後などでもいいので、病院に立ち寄るようにお願いします』
「長期的に薬の効果について考えたいため、何か異常があれば、何時でも構わないから病院に来てくれ」と、医療員は告げる。
それにこくりと頷いたキリの隣で、検査結果をキリ本人よりもずっと、真剣に聞いていた人物が口を開く。
シカ「……その、薬の効果を試すってのはキリの身体は大丈夫なのかよ?」
『は、はい! 主に回復薬や、治療の際に使用するもので、キリさんが以前、樹の里で使っていた能力を向上させるといった類のものではありません』
少し頬を染めて、医療員は少したどたどしいながらもシカマルの問いかけの答えを探す。
『キリさんの生活に、支障をきたすものではありませんので、ご安心下さい』