第55章 カカシ相談室
ぎゅっと震えるぐらいに強くこぶしを握りしめるキリに、カカシが声をかけようとした時。
キリは続けて言った。
キリ「私はこれからも、いつまた奇襲を受けるかわかりません」
そう言った後に、キリはゆっくりと顔を上げた。
キリ「カカシさんの言葉で、はっきりしました。……私の〈一番の望み〉は、彼の幸せです」
カカシ「!」
真っ直ぐにカカシを見るキリの強い瞳に、カカシは言葉を詰まらせる。
カカシ「……キリが、その人と一緒に幸せになるって選択肢は無いの?」
その問いかけに、キリは困ったような笑みを浮かべて首を振った。
キリ「もとより好意を抱いていましたが、それ以上を考えた事はありませんでした」
そうして、キリはゆっくりと息を吐いた。
キリ「彼は、本当に優しい人なんです。そして、私が今もなお誰かから狙われているのは確かで……私も、そう簡単にやられるつもりはありませんが、そうなる可能性はいつだってあります」
もし、と少しためらうようにキリは告げる。
キリ「もし、もしも……奇跡が起きて、彼が私を選んでくれたとしても。私がいなくなってしまったら、きっと悲しむでしょう」
だから、この気持ちには蓋をして、彼の幸せを願いたいと。
キリはそう言って、微笑んだ。
カカシ「忍やってる以上、誰だってその可能性はある。何もキリだけが諦める必要はないでしょ」
キリ「……ありがとうございます。でも、私は他の人と比べて、その可能性が非常に高いです」
それに付き合わせたくないのだと、明るく告げるキリに、カカシには複雑な思いが募る。
カカシ「じゃあ、キリはその人と病院の女の子の行方を応援出来るの?」
キリ「!」