第55章 カカシ相談室
第55話 カカシ相談室
樹の里で出会った頃のキリ。
そして、木ノ葉隠れに来たばかりのキリは、生きる意志があまりにも薄過ぎた。
その表情と瞳を覗けば、言葉にしなくとも、死を望んでいることを充分に感じられた。
キリ「でも、今は……色んな人の支えがあって、もう一度生きたいとそう思っています」
それも、知ってる。
穏やかになったキリの表情と、柔らかな声音。
そして何よりも、キリ自身の周囲との接し方が180度変わっているから。
カカシ「うん」
キリ「私、生きていて良かったです」
きゅっと、カカシの身体を抱くキリの背中を、カカシはあやすようにぽんぽんと叩く。
カカシ「そっか」
カカシ(良かった)
当初は、いつそうなるかわからないぐらい、危うさを持っていたキリが、自ら望んで生きる事を決めてくれて。
それを心から嬉しく思う。
キリ「あの時。カカシさんが、私の手を引いてくれたからです」
カカシ「!」
そう言って、キリはさらに、ぎゅっとカカシの身体に回している腕に力を込める。
キリ「カカシさんの手がなければ、今、私はここに生きていません」
カカシ(っ……)
「本当に感謝しています」と、キリはカカシに身を寄せる。
カカシ(キリは本当に……やってくれるね)
ぽんぽんとキリを宥めていたはずのカカシの手が停止する。
抱きしめていたはずのキリに、いつの間にか自分が抱きしめられていた事にようやく気付いた。
カカシ(相談に乗ってたのは、俺の方だったはずなんだけどね)
本当に。
一体いつの間に、それがくるりと代わっていたのだろうか。