第55章 カカシ相談室
……リンやオビトの事。カカシに今でも忘れられない傷がある事に、キリはどのくらい気付いたのだろうか。
カカシ(いやぁなんか、ほとんど気付いてそうで怖いよね)
それも限りなく正解に近い状態で。
そんなキリに、カカシは苦笑しながら、だらりと身体の力を抜いて、キリにもたれかかった。
キリ「っ!」
突然、ずっしりとカカシの重みがキリにかかって、一歩二歩と後退したキリは、慌ててそれを受け止める。
そんなキリの姿に、ふっと笑みをこぼしたカカシは、くすくすと笑いながら、再びキリと向かい合った。
カカシ「くっくっ、ごめんごめん」
キリ「いえ」
ふふっと、つられて笑みを浮かべたキリに、カカシは目を細める。
カカシ(ほんとに良い顔で笑うようになったね)
周囲の存在を無に出来るほどの、鉄壁をまとっていたキリは、今ではこっちの心を解くような笑顔を向けてくれる。
キリ「………」
じっと、自らの手にキリは視線を落とした。
カカシ「どうかした?」
キリ「いえ、少し不思議で……手が、綺麗に見えます」
カカシがそう言ってくれたから。自分は何も変わってはいないのにと、 キリは自分の手をくるくるとひっくり返して、驚きの表情を見せる。
カカシ「……一緒、だね」
キリ「え?」
そう言って、カカシも自らの手に視線を落とす。
なるほど確かに、以前とは違って見える。
カカシ(………)
驕るわけではないが、キリが今、ここでこうやって笑っているのが。
あの日、キリの手を引いた〈この手〉のおかげだと言うのなら。
何度も血を重ねた自分の手も、そう悪くはないのではないか。なんて、そんな事を思ってしまった。
カカシ(まったく、これじゃどっちが先生かわかんないね)
カカシ「ねえキリ」
キリ「はい」