第54章 好きな人
カカシ(まさかシカクさん……なんて事はないよね)
絶対に無いとも言い難いのが少し怖いが、キリの同世代の医療員と好きな人が同じとなれば、シカクである可能性も低いだろう。
うーんと、カカシは頭を悩ませてはみるが、答えまで導くには、もう少し情報がなければ厳しい。
キリ「自分よりもずっと前から好きだったんだと思うと、気遅れてしまって……」
カカシ「時間は関係ないとは思うけどね。ちなみに、キリはいつからだったの?」
キリ「私は、その……アカデミーの頃からです」
カカシ「!!??」
カカシ(え、嘘でしょ!? アカデミーっ!? キリが!?)
「そっかぁアカデミーかぁ」と、なんでもないように微笑みを貼り付けつつ、衝撃が走っていた。
カカシ(あの頃のキリなんて、触れようとすれば周りが怪我するぐらいの分厚い+鋭利な造りの壁が……あ)
今よりもずっと、表情も、抑揚もないキリの姿を思い出す。
そして、あの頃からキリの恋心などまるで感じられなかった理由が思い当たった。
カカシ(……あの頃のキリに、そんな気持ち出せるわけない、か)
断つつもりだった命と、傷だらけのキリ。
淡く芽生えたその気持ちも、押し殺して生きていたのだろう。
我慢、耐え忍ぶ、押し殺す。
そんな毎日だったのだろうと思えば、カカシは胸に小さな切なさを覚える。
カカシ「そんなに悩むって事は、それだけキリの好きな気持ちが大きいんだね」
そう言えば、少し恥ずかしそうに頷いたキリに、カカシはふと口角を上げる。