第54章 好きな人
…………………………
キリ「それが……見ていられなくて。自分でもどうすればいいのか……」
カカシ「うん」
キリ「とても良い子で……同じ人を好きだと聞くまでは、その子と話す時間を楽しみにもしてました」
カカシ「うんうん」
キリ「それなのに、今は……」
カカシ「なるほどね」
迷いながら言葉を紡ぐキリ。
カカシ(いやぁ、まさか)
ゆっくりと語られるそれに耳を傾けていれば、どうやらその悩みというのは、恋のお話であるらしい。
カカシ(キリが恋愛絡みとはね)
樹の里の事や、それに関する人間関係。
木ノ葉の里で、いまだに多数いるキリに対して好意的でない人たち。
又は、任務での失態など。
てっきり、そういった類の悩みだと思っていたカカシは、内心でかなり驚きを覚えている。
カカシ(いやいやいや、恋愛も複雑だからね。深刻な悩みではあるんだけど)
お年頃なキリたちならば特に。
だが、しかし。
カカシ(ちょっと相手誰? 何これめちゃくちゃ気になるんだけど)
深刻な悩みを話してくれているキリには悪いが、まずキリのお相手が気になって仕方がない。
話しの中で、意中のお相手の名前は出てこなかった。
カカシ(え、これ聞いちゃ駄目? 駄目なの?)
露顕したくないから、言わないのだろうか。
そうであれば、ねえねえ誰なのなんて、空気が読めないにも程があるだろう。
カカシ(お見舞いに来たり、一緒にいるとなると……相手はシカマルが妥当なんだけど)
里内でキリを見かける時に一緒にいる相手といえば、シカクかシカマル、最近はヒナタぐらいだ。
カカシ(いやーでも、俺も今のキリの身辺をよく知ってるわけじゃないしね)
カカシの班でも、ナルトからキリの話しが出る事があるし、どうやらサスケもキリの実力を認めてるらしく、稀にキリの名前があがる。
よく見かけるから、というだけでは確証にいたるには不充分だろう。