第54章 好きな人
キリ「家に居る時も、外に行く時も一緒に居る事が増えて、本当は凄く嬉しいんですけど……」
うんうんと聞いているその中であった単語に、カカシはぴくりと反応を示した。
カカシ(家……家!)
今、キリは家と確かに言った。
奈良家で生活をしているキリの家。
【家に居ても、外に行く時も】
まるで同じ場所で、生活をしているようなその言い方。
さらに、キリの性格上、世話になっている奈良家に自分の知人を呼ぶという事は、まず無さそうだ。
では、その相手は。
カカシ(シカマル……!!)
導き出された答えに、カカシは感慨深くさえ感じる。
シカマルが昔、病院でキリへの恋心を自覚したのをこの目で見て。
それから、そっと二人を見守っていたのだが。
前途多難だと思っていたが、そうか二人はそんなにも前から両思いだったのかと。
嬉しい真実発覚に、カカシはうんうんと頷いて、心の中でシカマルに祝福の言葉を送る。
良かった。本当に良かった。
あの、からかえば顔を真っ赤にしていたシカマルが。ついに。
男らしいところもあるが、ヘタレなところはとことんヘタレなあのシカマルが、ついに。
カカシ(シカマル……)
シカマルの想いも報われていたのかと思えば、カカシの胸も熱くなる。
良かった良かったと、ほろりと内心涙をぬぐって、カカシは菩薩のように優しい微笑みでキリを見つめる。
キリ「……………」
すると、そんなカカシとは対照的に、キリはその表情に影を落としていく。
少しの沈黙の後で、キリがぽつりと呟いた。
キリ「人を殺めた事がありますか」
カカシ「!」