第54章 好きな人
…………………………
同時刻。
本部にて、カカシはかれこれ数時間、書面とにらめっこを続けている。
難解な暗号解読のため、綱手によって暗号班の他に、上忍も何名か召集された。
カカシ(はぁ……こういうのは暗号班に任せなさいよ)
頭は冴える方ではあるが、それはどちらかといえば、戦闘で才を見せるものだ。
帰りたいと全力で願いを込めて、ふと窓を覗けば、そこにキリの姿が見える。
カカシ(おやぁ?)
その姿は散歩、というよりはふらふらと放浪している。といった方が正しいだろう。
カカシ(んー……)
ぽりぽりと頭をかいていれば、ちょうどそこに一服しに来たアスマがため息と共に、煙草の煙を放つ。
アスマ「はぁー全然進まねぇな。これ朝までに帰れんのかよ」
カカシ「いやぁまったく。アスマ、ごめんちょっとこれ持って」
アスマ「あ?」
ぽいっと、カカシは分担された書類をアスマへと手渡した。
カカシ「じゃ、後はよろしく」
アスマ「は? おい、カカシてめぇふざけ……」
これにてドロンと、瞬身の術を使用した際、何やら熊さんがわめいていたような気がするが、きっと気のせいだろう。
「よっ!」と、キリの目前に現れれば、キリは少々驚いた様子を見せる。
カカシ「キリ、こんなとこで何してるの」
キリ「カカシさん」
カカシ「何があった? お兄さんに話してごらん」
にっこりと茶目っ気たっぷりにそう言えば、キリは何もないと平然を装って首を振る。
カカシ「んー残念。それ」
普段なら、騙されてしまうかもしれないほど見事な平常心を見せるキリだが。
カカシはスッと、キリの足もとを指差した。
カカシ「普通の子は裸足で外を歩きません」