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ささめごと -ながい夢- 【NARUTO】

第54章 好きな人






* * *



シカマルが帰った後。

花瓶を片手に病室へ戻った医療員が、少し寂しそうな表情を見せたことに、キリは複雑な気持ちになる。


そして、そんな気持ちを持ったまま始まった医療員とのお喋り。

他愛のない話しから、シカマルへの憧れと想いを嬉々として語るそれを、曖昧に頷き返す事しか出来なかった。


結局、その日もまた、満足に眠ることが出来なくて。

キリは、昨日よりも憂鬱な入院四日目の朝を迎える。




…………………………



昼を少し過ぎた頃、心なしかキリの顔色を窺うようにシカマルが一輪の花を手に、病室へと訪れた。


いつもはただ嬉しく受け取っていた花を、今日はすぐに花瓶に入れて、足早に花瓶の水を換えに行く。

ザバッと流しに水を捨てた時、大きくはねた水が、キリの衣服を濡らした。


キリ(……冷たい。私は、なにを……)


しているのだろうか。

ここ数日の自分は、本当におかしい。


そもそも、こんな風に慌てて水を換えて、どうするというのか。

また彼女が水を取り換えようとした時に、それはもう済ませたから大丈夫だと、白々しくそんな言葉を吐くつもりなのだろうか。


そんな事をしなくとも、善意でしてくれたそれに、ありがとうと、ただ一言礼を告げればいいだけの事。

なぜ、それが出来ないのか。


医療員は、シカマルが来ているからと、わざわざ病室へ来る事はなかった。

検診など本当に必要な時に訪れて、そこにシカマルがいれば本当に可愛らしく頬を染めて、ほんの少しシカマルと会話をすればすぐに病室を後にする。



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