第13章 ハイタッチ
キリがかけた土遁の術は頑丈に出来ていた。
しかしそれも最後には所々が崩れていて、倍化の術で押さえ込んでいるのにも関わらず、渾身の力で暴れる虎にチョウジは疲労困憊し、ぜーぜーと息を切らしていた。
あれではシカマルの影真似で、どれだけ虎を捕らえられたのかわからない。
それに、猛獣使いに関してもシカマルは相手が忍ではないと油断していた。
チャクラこそ使わないものの、男は想像以上に剣術と身のこなしに長けていて。その影を確実に捕らえることが出来たかと問われれば、自信はない。
アスマがいれば、キリの役に入り、成功もしただろう。
シカ(…今回、唯一負傷の可能性があったのはキリだけだ)
シカマルはちらりと、あの戦闘を涼しい顔をしてやってのけたキリを見る。
シカ「お前がいなかったらこの任務、怪我無しじゃ成功してなかっただろーな」
うんうんとチョウジといのも頷いて、三人でそう言えば、キリは言葉を詰まらせる。
それから里に帰るまでの間、猪鹿蝶が声をかければ、終始キリはあの何とも言えないような表情で、ぽつりぽつりと返事をしていた。
口数は少なかったが、行きとは異なるこの空気は決して悪いものではなかった。
………………………
ーー解散後の三人ーー
チョウ「キリ、シカマルが手あげた時困ってたね」
いの「かなりねー。あの子がどうすればいいのか助けを求めて、こっち見るなんて初めてだったわよ」
チョウ「任務中も、戦闘中だってそんなの無かったもんね」
いの「それどころか、木ノ葉に来たばっかりのアカデミーの時だってなかったからねー」
シカ(……こっちはすげー勇気いったんだよ)
出した手を、引っ込めてしまわなくて良かった。
今回は俺の粘り勝ちだ。