第53章 お見舞い
昨晩。
シカマルはキリが家に居ないことに、落ち着かなさというか、少し寂しさを覚えて。
過剰労働を対価に、カカシから入手したキリとの写真を眺め、あの日のキリの可愛さを思い出しては悶える。
そんな事を繰り返していたら、寝不足になってしまったため、大きな欠伸を一つ。
シカ「あー眠ぃ」
ベッド脇に座っていたシカマルは、そのままボフッとキリのベッドに突っ伏する。
すると、真っ白な布団がふわふわととても心地良く、この病院も中々やるものだと心の中で賛美する。
ちらりと顔だけをキリに向ければ、上体を起こしているキリを見上げる形になる。
布団越しとはいえ、キリの足の上に乗っているシカマル。キリは一瞬驚いた表情を見せたが、その表情はすぐに柔らかいものに変わった。
シカ「くっくっく……」
突然笑い声をもらして、体を震わせるシカマルに、キリは小首を傾げた。
キリ「なに?」
シカ「いや、すげぇ進歩だなと思ってよ」
キリ「?」
シカ「前は面会謝絶で、見舞いどころか会うことすら出来なかったじゃねぇか」
それが、今ではこんな風に優しく受け入れてくれるまでになっている事が、嬉しくてたまらなかった。
そして、やはり。
この優しい姿が、キリの本来の姿なのだろうと実感する。
キリ「あれは……」
その当時のことを思い出したのか、バツの悪そうなキリに、シカマルはまたくつくつと笑った。
シカ「別に責めてるわけじゃねぇから、そんな顔すんな」