第52章 ダブルレインボー
シカ「なんすか?」
カカシ「いやー今日、綱手様に大量の書類整理を押し付けられちゃってね。肩、揉んで欲しいなー」
肩が凝って堪らないのだと、にこにこと笑みを携えながら告げるカカシ。
シカ「は? 嫌っすよ。なんで俺が……用ってそれだけっすか」
誰か他の人にでも頼んでくれと、シカマルが背を向けた瞬間だった。
カカシ「虹、綺麗だったね」
シカ「!?」
バッと後ろを振り返ると、その手には一枚の写真が握られている。
シカ「なっ、それっ」
そこに写るのは、手を繋いで虹を見上げているシカマルとキリの後ろ姿。
シカ「なんでそんなもん持って……!?」
カカシ「んー、企業秘密」
語尾にハートマークでもついていそうなカカシの言葉。目を見開いているシカマルの視線は、写真一点に注がれている。
カカシ「欲しい?」
スッと差し出された写真に手を伸ばした時、それはひょいっと躱されて、カカシはぐるぐると肩を回し始める。
カカシ「あー肩が痛いなー、重いなー」
シカ「………」
…………………………
カカシ「そこそこ。いいねー。シカマル、もっと強く押してくれる?」
シカ「っす」
カカシ専属のマッサージ機となって、はや十数分。
まったりと至極の表情を浮かべていたカカシは、ポンっと手をたたいた。
カカシ「あ、そういえば。使った資料、棚に戻して回らないといけないんだった。あー大変だなぁ、どこかに手伝ってくれる優しい子はいないかなぁ」
シカ「………」
棒読み極まりないカカシ。シカマルは山積みの資料の中から、近くのものをひと山、持ち上げる。
シカ「どこに運んだらいいんすか」
カカシ「え、もしかして手伝ってくれるのシカマル。いやー悪いね」
うそーシカマル優しいーと、自ら動く気がまるで垣間見れないカカシから、次々と容赦のない指示が飛んでくる。
カカシ(いやーくっくっく……素直で可愛いねぇ)
この後、シカマルは夜まで馬車馬のように働かされて、一枚の写真を手に帰宅したのであった。