第52章 ダブルレインボー
シカ「っし、行くか」
キリ「ええ」
置きっぱなしになっていた荷物を回収して、帰路を歩くキリの視線は、シカマルの手に向けられる。
キリ(………)
来る時は繋がれていたその右手。
虹を見ている時もそのままだったそれは、先ほどの騒動で離れてしまった。
キリ(繋ぐわけ……ない、か)
それが、当たり前なのだと、自らの馬鹿な考えをかき消すように首を振る。
キリ(私……今日はおかしいわ)
昨日、チョウジが意味深な言葉を残すから。
変に意識してしまって、今までに感じたことのない感情が溢れ出る。
今日の自分は、平静を装っていられたのだろうか。
キリ(……あと少しだけ)
もう一度手を繋ぐなんて、そんな事は出来ないけれど。
キリは隣を歩くシカマルに、こっそりと一歩、身を寄せる。
シカマルにバレてしまわないだろうかと、ドキドキと鳴る胸に必死に気付かないフリをして。
キリは一歩分、近くなったシカマルとの距離に、小さく微笑みを落とした。
これが、今の自分の精一杯。
…………………………
ーー虹の写真ーー
Dランク任務を終えて、任務報告も無事完了したアスマ班。
そこに居合わせたカカシは、にーっこりと笑って、シカマルを呼び止める。
いの「カカシ先生?」
チョウ「シカマル、外で待ってるね」
アスマ「待つのはやめとけチョウジ。カカシのあの顔はいい予感がしねぇ」
「早く行くぞ」と、いのとチョウジの背中を押して、アスマは早々に退散する。
そこに残されたシカマルは、先ほどと同様に満面の笑みで手招きをするカカシに、訝しげな視線を送った。