第52章 ダブルレインボー
キリ「綺麗ね」
シカ「おーすげぇな」
キリ「虹が二つ架かっているのなんて、初めて見たわ」
シカ「俺も。つーか、こんなにくっきり虹が出てんのも初めて見るかも知れねぇ」
消えてしまわなくて本当に良かった。
そう言って、虹から視線を逸らさないキリに、シカマルはチラリと視線を送る。
シカ(やべぇ……)
キリが珍しく息を切らしていることから、どれだけ急いで伝えに来てくれたのかがありありとわかる。
仕組みはよくわからないが、虹が二つも出るなんて、そうそう起こる事ではないだろう。
何度見ても美しいと思えるこの光景。
今はずっと魅入っているそれを、キリは自分と共有するべく、わざわざ家まで駆けてきてくれた事が、嬉しくてたまらなかった。
繋いだままの手から、キリのぬくもりが伝わる。ドクドクといつもよりもずっと速いシカマルの鼓動が、決して走ったせいではない事はわかっている。
任務に行った時や、里内にいる時も。
綺麗なものを見た時、面白い事があった時、美味しいものを食べた時。
シカマルは、それをキリと共有したいと思うことがよくあった。
アスマ班でいる時によくあるそれに、キリがこの場に居ない事が寂しいというか、ひどく残念に思うのだ。
シカ(キリも……)
同じように、思ってくれたのだろうか。
そう思えば、頬に少し熱がともる。
二人して見上げているこの七色の橋が、どうかいつまでも消えないでくれと、ガラにもない事を願った。