第52章 ダブルレインボー
昼から任務に出掛ける彼は、普段通りなら部屋でのんびりと待機しているはずだ。
しばらくして、近付いてきた奈良家。キリは玄関へは回らずに、シカマルの部屋がある裏側へと走る。
そのまま華麗な身のこなしで、壁づてに二階へと飛び移り、窓をノックすると、目を見開いたシカマルの姿が見えた。
シカ「!?!? お前、何してんだよ!?」
キリ「部屋にいて良かった。一緒に来て」
シカ「は?」
キリ「早く」
そうキリから手を伸ばされて、シカマルは訳もわからぬまま、部屋にあった予備の靴を履いて、キリの手をとった。
シカ「うおっ!?」
手が繋がれた瞬間、ぐんっと勢いよく引っ張られて、そのまま二人して窓を飛び降りる。
シカ「危ねぇー、おいキリ? どこに……っ」
ぎゅっとシカマルの手を引いて、キリは再び走り始める。
早くしなければ、あの虹の橋が消えてしまうかもしれない。
先ほどよりも、早いスピードで森の中を走る二人は、キリが修業をしていたところまで到着する。
キリ(あと少し……!)
バッと森を抜けた時、空に架かる二つの虹が目に飛び込んできた。
シカ「!!」
青空に浮かぶ七色の二つの橋。
幻想的なその光景に、シカマルが感嘆の声をもらせば、キリはふわりと微笑みを浮かべる。
シカ「すげ……」
キリ「まだ綺麗で、良かった」
ダブルレインボー。
見た人は幸せになれるというそれは、なんとも儚げな美しさを見せていた。
これを見せたかったのだと告げるキリの視線は、空に釘付けになっている。