第52章 ダブルレインボー
キリ「もうあんまり見えないわね」
シカマルの思いもむなしく。
あれから数十分の間に、あんなにもくっきりと出ていた虹は、かなり薄くなってしまった。
残念そうに、言葉を落としたキリ。
シカマルに伝えになんて来ずに、ずっとこの場にとどまっていれば、もっとゆっくり絶景を堪能出来ただろうに。
そう思ったが、それよりも嬉しさが圧倒的に勝って、キリにはとても伝えられない。
その次も、もしこんな事があれば、やっぱりシカマルはキリと共有したいとそんなワガママを思ってしまう。
シカ「綺麗だったな」
そう言えば、キリはにこりと笑顔を見せる。
キリ「ええ」
シカ「ありがとな」
キリ「!」
確かに稀に見る絶景ではあったが、正直キリが今回のような行動に出てくれた事が、何よりもシカマルの心を満たしてくれた。
どうしようもなく嬉しくて、シカマルは繋いだままになっていた手にきゅっと力を込めて、キリに笑いかける。
シカ「ここに連れてきてくれてよ。お前と一緒に見れて良かった」
キリ「っ……あ、よ、良かった」
「気に入ってくれたみたいで」と、いつもよりも小さな声で言ったキリが視線を逸らした事を不思議に思って、シカマルはキリの視線の先に顔を覗き込ませる。
シカ「キリ? どうかしたか?」
キリ「な、なんでもないわ」