第52章 ダブルレインボー
キリ「仲は……良い、かもしれない」
火照る頬を抑えるようにして、キリは小さく頭を振った。
落ち着いて考えてみると、シカマルがキリを好きだというのは、やはり大袈裟に思うが、不仲である事はまずない。
現在は、友好的な関係を築けていると思う。
キリ「!」
ぐるぐると考えを巡らせていれば、ぽつりとキリの頭に雫が落ちる。
見上げれば、木々の間から見える青空から、ぽつりぽつりと雨が振った。
次第に強くなるそれに、キリは荷物を集めて、大木の下へと逃げ込み、雨宿りをする。
キリ(……不思議)
もとより、雨は嫌いではない。
その中でも、自然のイタズラか、稀に見るこの青空の中の雨は、同じ雨でもいつもよりずっと神秘的に思えるのは、何故だろうか。
じっと飽きる事なく雨を見続けていれば、そう時間を経たずして、すぐにそれは止んでしまった。
大木の下から出て、キリが空を見上げれば、そこにはまた自然のイタズラが顔を出していた。
キリ「あ……」
木々の隙間にチラリと見えた七色の虹。キリはおもむろに足を進める。
少し歩いた先で、視界の開けた草原に辿り着き、そこにある光景に息を飲んだ。
キリ「!!」
青空にかかる二つの虹。
虹の上に、もうひとつ虹の橋がかかっていた。
生まれて初めて見る幻想的なそれに、目を奪われるよりも先に、キリは駆け出していた。
荷物も忘れ、せっかくの美しい光景に背を向けて、キリは全速力で奈良家を目指す。
キリ(まだ家にいるはず……っ)