第51章 心違い
ただ今のままでは、あの不器用なシカマルの努力が報われなさ過ぎて、不憫過ぎる。
周りから言われて、キリが少し意識するぐらいの援護射撃は許容範囲内だろう。
いの「まあ私のサスケ君と比べちゃうと、シカマルなんて相手にならないけど。悪い奴じゃないでしょー」
どう思うのかと笑顔を向けてくるいのに、キリは考えを巡らせる。
キリ(彼が……私を……? そんな事考えたこと無かった)
そして、考えれば考えるほどに、その答えが導き出される。
キリ「彼が私を好きだなんて……絶対ないわ」
いの「どうして? 仲も良いみたいだし、シカマルあんたには優しいじゃない」
キリ(確かに優しいけれど……)
その優しさは、キリだけに向けられているものではない。
キリ「彼はみんなに優しいわ」
いの「やだ、あの面倒くさがりがそんなわけないじゃない」
キリ「だって……もしもあなたが傷付けば、彼はあなたを守るわ」
いの「!」
そう言われて、いのはこれまでの事を思い出す。
今まで、いのが任務や修業の時に負傷すれば、身を挺してでもシカマルが前に出てくれた事が何度もあった。
キリ「あなたが困っていたら、あなたのことを助けてくれるでしょう?」
いの「……そ、うだけど」
いのがアカデミーの時も、忍とはまるで関係のない悩みを抱えた時も、なんだかんだとシカマルは相談に乗って助けてくれた。
キリ「どこかへ出掛けようと言えば、ついてきてくれるんじゃない?」
いの「……」
「面倒くさい」と、そう言いながらも結局は最後までいのに付き合ってくれるのだ。
キリ「彼は優しい人だと思うわ。私だから、優しいわけじゃない」
いの「うっ……」
違うのに。キリが間違いなく特別な事を知っているのに。言い返す言葉が出て来なくて、いのはぐっと言葉を詰まらせた。