第51章 心違い
思い返せば本当に、近頃はずっと一緒にいるような気がする。
もちろん、互いに任務もあれば、班での修業もあるため四六時中とはいかないまでも。それ以外では時間を共に過ごす事が多い。
キリ「確かに、そうね」
ぽつりとそう言ったキリに、いのは、にんまりと口角を上げた。
いの「外で見かけたりするけど、あんた達ってどこに出掛けるの?」
いの(まあどうせ、修業とかそんな感じなんだろうけど。いいとこヨシノおばさんのお使いってとこかしら)
何せ甘栗甘にも行った事がないキリだ。シカマルにそんな甲斐性があるとも思えない。
キリ「修業」
なんとも色気のない返事に、いのは内心ため息を落とした。
いの(はあ、やっぱりそんな事だろうと思ったわよ。まったく、シカマルそんなんじゃいつまで経っても……)
キリ「あとは、森へよく行くわ」
いの「森? なんでまたそんな所に」
キリ「前に、怪我をした子鹿を保護していたことがあって。今はもう森へ還してしまったけど、彼が子鹿に会う為に森へ連れて行ってくれるわ」
いの(やだ、シカマルも意外とやるじゃない!)
思わず前のめりになりそうになって、いのは必死でそれを抑え込む。
鹿がいる森といえば、奈良家の私有地だろう。古き縁がある猪鹿蝶でも無断で入ることは許されていない。
誰にも邪魔されず、静かで美しい森の中。二人だけの特別な時間だ。簡単に他人が割り込めるものではない。
いの「へぇ……いいわね! 他にもあるの?」