第50章 呼ばない理由
ヒナタ「キリちゃん……! ごめんなさい、わたし、行かなくちゃならないところがっ……!」
キリ「!!」
「大切な事を教えてくれてありがとう。本当にごめんなさい」そう言って、一度頭を下げたヒナタは、すぐさま来た道を引き返す。
キリ「ヒナタ……?」
引き止める隙もなかったヒナタの背中を、キリは不思議そうに見送るしかなかった。
…………………………
ヒナタ「はぁ、はぁっ」
全速力でシカマルの家を訪れたが、シカマルは不在。
多分どこかをふらついているか、昼寝でもしてるんじゃないかと、シカマルの母が教えてくれた。
ヒナタ(シカマル君っ……どこに……)
こうしている間にも、任務の時間は迫りくる。任務前に白眼を発動させてチャクラを消費するわけにも行かず、ヒナタの中にじりじりとした焦りが募っていく。
奈良家を訪れた際。
ヒナタの切羽詰まった様子に、母親が何かあるならシカマルに伝えておこうかとも言ってくれたが。
母親は、シカマルがキリに好意を寄せていることを知らないかもしれない。それに、キリが好意を寄せていることも。
ヒナタには色々な事を伏せて、上手く説明出来る気がしなかった。
母親に礼と謝罪を告げて、すぐにシカマルの捜索に出たが、この広い里内でシカマルの行く宛など検討もつかず、その姿は見つからない。
シカマルは現在進行形で、キリの好きな人が樹の里にいると思っている。
好きな人が、自分以外の誰かを好きだなんて。想像するだけで苦しくなる。
そんな気持ちをシカマルに、それもヒナタの勘違いで与え続けている。自分はなんて酷いことをしてしまったのだろうか。