第50章 呼ばない理由
キリ「イチカ? イチカは私の親友で……小さな頃からずっと一緒にいた、私の凄く大切な人よ」
ヒナタ(親、友……)
ヒナタ「そ、その人のこと、好きじゃなかったの……?」
そう問えば、大好きだと即答したキリは、以前話をした時と同様に、優しい瞳を見せる。
キリ「イチカは彼とはまた違う好きで、大切」
ヒナタ(あ……)
キリと、友人になったばかりの頃に見た、この眼差しを今のヒナタは見た事があった。
それは以前……ヒナタにも向けられた事があるものだった。
そこで、まさかとヒナタの頭に浮かんできた一つの答え。
ヒナタ「イチカさんは、女の子……?」
キリ「? ええ、もちろん。いつか、ヒナタにも会って欲しい」
本当に良い子なのだと、そんな嬉しい言葉をかけてくれたキリだが、ヒナタの顔からサッと血の気が引いていく。
ヒナタ(……っ、わ、わたし……シカマル君になんてこと……)
全て、全て自分の勘違いだった。
ヒナタ(わ、わたし……っ)
ヒナタがキリの想い人だと思っていたイチカは、女の子で、キリの親友で。
本当のキリの想い人は、シカマルだったのだ。
どんどん全身から血の気が引いていくヒナタの脳裏に、以前、キリのことが好きだと言ったシカマルとのやり取りが思い返される。
キリを好意的に想っているシカマル。
そんなシカマルにキリの友人として、よろしく頼むと言われた時。
ヒナタはシカマルに協力は出来ないと告げた。言葉にこそしなかったが、樹の里にキリの好きな人がいると思わせる態度をとってしまった。
ヒナタ(………っ)
それを知ったシカマルのあの表情を思い出して、ぎゅっとヒナタの胸が締めつけられた。