第50章 呼ばない理由
第50話 呼ばない理由
これから長期の任務に出る事になったヒナタは、その報告と挨拶をかねて、キリのもとに訪れていた。
キリ「これから出るの? 期間はどのくらい?」
ヒナタ「うん、あと少しで集合時間だから、もうすぐ行くね。戻ってくるのは、大体一ヶ月後かな……?」
キリ「 そんなに……。危険な任務なの?」
ひどく心配そうな顔を見せたキリに、ヒナタは慌てて首を振った。
ヒナタ「ううんっ! 情報収集が主だから、大丈夫だよ。それに……もし、戦いになっても頑張るね」
そう言って、強い意志をもったヒナタの瞳に、キリはふと微笑みを浮かべた。
キリ「ヒナタなら出来るわ。落ち着いてやれば問題ない」
ヒナタ「ありがとうキリちゃん」
キリ「でも、もしも。危なくなったら呼んで。必ず助けに行く」
だから絶対に呼んでくれと、真っ直ぐにこちらを見るキリは、もちろんヒナタの任務地も、その内容も知らないはずなのに、呼べば本当に来てくれそうな気がして。
ふわりと、ヒナタの緊張が解けた。
ヒナタ「うん、すごく心強いよ」
そう言ったヒナタに、キリもにこりと頷き返す。
ヒナタ「キリちゃん、今日はお休み?」
キリ「ええ、昼からは彼と修業をする予定」
ヒナタ(……)
ヒナタはキリからよく、シカマルと共に修業をする事があると聞いているし、実際に自分もその修業に参加した事がある。
だから、ここで言う〈彼〉がシカマルのことを示しているのは理解出来る。
しかし、そこでふと、ヒナタは今まで疑問に思っていた事を口にした。
ヒナタ「キリちゃんが……シカマル君のことを名前で呼ばないのはどうして?」