第49章 父親
キリ.ヒナタ「!!」
ふわりと辺りに花を咲かせて喜ぶキリ達の間に入り、ヒアシはそっと二人の背中を押した。
ヒアシ「では行こう。家にはハナビというヒナタの5つ下の妹もいる。仲良くしてもらえると有難い」
キリ「はい、よろしくお願いします」
ヒアシ「ああ、こちらこそよろしく頼む。華やかになるな。……まるで、娘が三人になった気分だ」
ちらりとシカクに目を向けたヒアシは、最後の言葉をいやに強調しながら、ふっと鼻で笑って、すぐにキリ達に視線を戻した。
シカク「っ!!」
シカク(この狸じじい……くそっ、いい性格してやがる)
どうやらシカクの発言を思いのほか根に持っているようで、シカクは苦笑いをこぼした。
そんな三人のもとへもう一人、足を進める者がいた。
ヒアシ「ネジ、どうかしたのか」
その言葉に、ネジも悲しみの表情とともに、いつもよりも弱い声で言葉を落とした。
ネジ「恐れながら……私もヒナタ様とこの数日、深く関わる事が出来ました。叶うならば、あと少し私もご一緒出来ればと……そう思います」
ヒナタ「ネジ兄さん……っ」
じわりと涙をためて訴えかけてくるヒナタと、ヒナタとの時間を大切にするネジの様子。我が子と弟の子供が、また共に居る。
そんな二人の訴えに、ヒアシは感慨深い気持ちで頷いた。
ヒアシ「ああ、ああ……三人とも、家に来るといい。ネジ、お前も時間の許す限り、好きなだけいるといい」
「ネジが同行しても構わないだろうか」と、ヒアシから伺うように視線を向けられたキリは、問題ないと頷き返す。
ヒアシが「さあ行こう」と、足を踏み出した時。
ネジは、ちらりと顔だけを後ろに向けた。
シカ「!!」
ニヤリと嫌な笑みをたっぷりと三秒は浮かべてから、ネジはヒナタ達に穏やかな笑顔を向ける。
シカ「っ……あの野郎……」
色んな意味を含めて楽し気に去っていくヒアシとネジに、この上なく腹立たしい気持ちが湧いてはきたが。
純粋に嬉しそうなキリとヒナタの姿を見たら、もう何も言えないシカクとシカマルは、大人しく家路につくしかなかった。